Co-Produced by NPO Earth&Human
KOTOWARI
会津サマースクール
2021
若者による、若者のための環境教育を。
最新のテクノロジーや各国間の政治的な合意によって、万が一、現在の気候変動や環境問題が解決されたとしても、人々のマインドセットが変わらなければ、テーマが変わるだけで、また同じことが起きてしまう。
真に持続可能な未来のためには、どのようなマインドセットが必要なのか?
サマースクール開催の背景
地球の自然環境が「持続」していくために、何かアクションを起こす時間が残されている最後の世代が今の私たちだと言われています。現状への危機感は世界中の若者世代の間で広がっており、環境問題は最も優先順位が高く、今後も向き合い続けていかなければならない課題とされています。
経済成長を選ぶのか、環境危機を止めるのか? 環境問題に向き合うときに社会が抱える矛盾は、特に現在の気候危機に際して著しいものとなっています。未来に関して三者三様の根拠や見立てがあるものの、誰も現時点で最適な答えは知りません。科学的にも社会的にも何が正解なのかは誰もわからない中、急速に変化していく自然環境と共に私たちは生きていかなくてはいけません。
そもそも、現在の私たちはどのように自然と交わっているのか? なぜ今のままの在り方を続けていくのが問題なのか? 具体的な解決策を模索するのと同時に、これらの根本的な問いを考えていく理由には、環境問題は外側の出来事ながらも、また同時に人間の内側の問題だということがあります。自然環境とは人間の価値観や生き方の鏡でもあり、そこに生まれる問題はそのまま私たちの内面を映し出しているものです。
このような問いを深めていく中で、人と自然の関係を改めて問い直し、さまざまな価値観や感性、体験を持ち寄ってこれからの未来を創造するための議論を行う場を作りたい。そんな想いから生まれたのが「KOTOWARI 会津サマースクール」 です。
日本の志ある若者たちが一堂に集い、自分自身と自然環境について共に学び、考え、動いていく。若者による、若者のための環境教育プロジェクトがこの夏、始動します。
KOTOWARI 会津サマースクール
撮影・編集協力:岡田洋平 & Daniel De Rienzo
本サマースクールの目標は、環境問題を背景に現代社会と経済の成り立ちや構造を理解した上で、個人としてどう自然と向き合っていくのか、これからの社会では人と自然はどう関わり合うべきかを再想像し、実践していくための土台作りです。
人文科学や社会科学の知見、そして身体的・内面的な気付きをもとに、自然環境との関わりを考え直していきます。人間の社会また経済活動が自然環境にどのような影響を与えてきたのかや、その在り方がどのように今の環境問題とつながっているのかを学び、参加者が自分自身をどう位置づけていくかを探求していく4日間の学びです。
学びのスタイルは多様で、ゲスト講師によるレクチャーやリベラルアーツ形式の議論、そして奥深い会津の自然の中での身体的なアクティビティが用意されています。また、気づきを促すための内省のワークを早朝と夕方に設けています。
本プログラムで扱うトピックは以下になります。
1. 気候変動や環境問題の概要と提起される諸問題
2. 近現代という時代の価値観と自然観
3. 資本主義と環境問題の関係
4. 都市の中での人間と自然環境
5. 気候時代の道徳と倫理
本サマースクールの終わりに、参加者に期待される成果は一つではありません。
現在の世界が直面している環境問題、特に気候危機が生み出す状況には、決められた問いも答えもないからです。だからこそ、参加者が自分自身や社会の在り方や価値観を振り返り、同じ志を持つ参加者たちと対話と交流を重ね、そして何より自然とのつながりを通して、自分たちを取り巻く世界を理解しようとしていくことの意味があります。
この過程を通してでしか見えてこない新たな気付き、そこから参加者自身が選び取っていく生き方こそが、参加者に持ち帰っていただきたい学びです。
開催概要
開催期日・場所
2021年8月17-20日福島県南会津町会津山村道場募集対象
高校生、大学生、大学院生15名(コロナ感染拡大防止のため規模を縮小して開催)参加費用
無料(宿泊費、食費、プログラム費は無料。参加者ご負担は現地までの交通費のみ)
- 参加にあたって必要な事前知識はありません。本サマースクールの主旨に共感する方はどなたでも申し込みいただけます。
- 事前課題として、1時間ほどのウェビナーへの参加、環境問題の入門書の課題図書(各自購入)が用意されています。
- 事後課題として、本サマースクールでの気づきを家庭や学校で実践・普及していただくことを想定しています。
当日スケジュール(仮)
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8/17 noon
・会場の山村道場に到着
・オリエンテーション
・ディスカッションの作法
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8/18 morning
・参加者の価値観の内省と意見の共有
・荒谷大輔氏による政治哲学の講義
・グループディスカッション
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8/18 afternoon
・資本主義と環境問題
・奥会津博物館での観察と対話
・武田悠作氏による講義(オンライン)
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8/19 morning
・斎藤幸平氏による講義(オンライン)
・都市の中の自然と人間
・森の中でのワーク
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8/19 afternoon
・気候時代の道徳と倫理
・これまでの講義のまとめ
・キャンプファイヤー
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8/20 morning
・自然農法無の会での実習
・会津の農業と林業のお話
・振り返り
ゲスト講師
斎藤幸平
経済思想家
大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。1987年生まれ。専門は経済思想・社会思想。 ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。『大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝』(堀之内出版)によって、権威あるドイッチャー記念賞を日本人初、歴代最年少で受賞。 著書に『人新世の「資本論」』(集英社新書)、マルクス・ガブリエルらとの対談集『未来への大分岐』(編著・集英社新書)など。
荒谷大輔
哲学者
江戸川大学基礎・教養教育センター教授、センター長。1974年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本文藝家協会会員。専門研究の枠組みに捕われず哲学本来の批判的分析を現代社会に適用し、 これまでなかった新しい視座を提示することを得意とする。著書に『「経済」の哲学:ナルシスの危機を越えて』(せりか書房)、『西田幾多郎:歴史の論理学』(講談社)、など。
武田悠作
経営学者
ハーバード大学博士課程に在籍、ハーバード・ビジネス・スクールにて教えるティーチングフェロー。1991年生まれ。専門は組織論・企業戦略論。Wesleyan University社会科学部卒業。論文・発表は世界経営学会や著名な国際学会での受賞多数。組織や社会の価値観やビジネスの力を環境問題の理解と解決にいかに結びつけていくかを本サマースクールでは講演予定。
会津の工務店・株式会社 志木
株式会社Creative2
漢方薬局 岩城一貫堂
会津という自然の学び舎
今回のサマースクールは会津地方、南会津で開催されます。
縄文時代より肥沃な土地として非常に栄えていた会津は、その一方で、日本海側気候で全国有数の多雪地帯でもあり、冬場の厳しい自然環境を主にした季節のサイクルで、人々の生活が営まれてきた歴史があります。土地が豊かである反面、冬場は厳しい雪と寒さに閉ざされるので、その独特な自然の摂理とともに暮らしてきた人の習慣や知恵がまだ色濃く残っている地域です。
特に多雪地帯であった地域には、人間の手から守られてきた自然、ブナの原生林があります。人によって整備されている森もあれば、人の手が入った後に放置されてしまった場所もあり、こうした違いを実際に現地で見比べることができます。また、自然資源としても生活の場としても自然環境と付き合い続けている、伝統の智慧と現代の知識を組み合わせた農業や林業の匠たちと、実際に会って話すことができるのも、会津の特徴です。
自然そのもの、そして、これからの自然と人の関わりを考えていく上で、会津は非常に貴重な学びのための場所となっています。
開催場所:会津高原 会津山村道場(福島県南会津郡南会津町糸沢字西沢山3692-20)
主催者紹介:KOTOWARI
アメリカのリベラルアーツ大学で学び、多様な専門性を持つ主催者たちと「NPO法人Earth&Human」による連携事業が「KOTOWARI」です。プロジェクト名の「KOTOWARI」には、時代が変化しても不変である、自然と人間を貫く根底の摂理(KOTOWARI)を共に探求していこうという想いが込められています。
私たちが今、はじめのステップとして取り組もうとしているのが、環境問題の影響と向き合っていくユース世代のために、本質的な学びの場を作ることです。まだ日本にない多角的、包括的な環境教育の場は、今の若い世代のみならず、後々の世代への贈り物になっていくと私たちは信じています。
■ 青木 光太郎
翻訳家、プロジェクト発案者。1992年生まれ。Wesleyan University哲学部卒業。
■ 宇野 宏泰
会津伝統の有機自然農法を学ぶ農家。1993年生まれ。Wesleayn University社会科学部卒業。
■ Lu Jianyi
外資系コンサル勤務後にITビジネスを起業。1993年生まれ。Wesleyan University生化学部卒業。